DME書き換えツール "TunerPro" の実用的な使い方

純正のDME(ECU)書き換えを無料でDIYするなら、TunerProというツールが最も強力だと海外自動車愛好家の中で昔から言われています。20年前のレガシーアプリですが、これに代わるものはいまだに出てきていないかもしれません。

一方プロ向けのDME書き換えツールはWinOLSがメジャーです。こちらは数十万支払えば安心と確実性が手に入ります。

TunerProを使おうとするオーナーさんは 

  • 速度リミッターを解除したい 

  • マフラー変えてエンジンチェックランプが出ないようにしたい 

  • エンジン始動時の騒音を小さくしたい 

など、ちょっとした書き換えを安価にできないか、などと考えている方々だと思っています。

プロに頼むとこの程度の書き換えでも概ね10万円はかかってしまいます。ちょっとした変更だからなんとか安価にでできないか、と思ってTunerProに辿り着くオーナーさんは多いはずです。

かといってTunerProの使い方を検索してみても、自分に合う解説コンテンツに辿り着けず、プロに頼むか頑張って自分で勉強するかの間を頭の中で行ったり来たりして、中々前に進まないのではないでしょうか。

このコンテンツでは、そんなオーナーさんの前進を助ける為に、TunerProの実用的な使い方をまとめてみました。

このコンテンツは、実際に自分で触りながら覚えたことを中心に書いています。

まだ僕も勉強中の身ですので、間違ったことが多々あると思いますが、自分の車では対応できているので参考になると嬉しいです。

目次

TunerProはデータ編集ソフト

DME書き換えをする上で、必要なツールは大きく分けて2つあります。

一つは車両からデータを読み書きするツール(ケーブルとソフト)、もう一つがデータを編集するツール(ソフト)です。

読み書きするソフトと編集するソフトは一緒だと勘違いされてしまうことが多いようですが、これが一緒になっているソフトは僕の知っている限りありません。

TunerProはデータを編集するツールです。TunerProには"RT"がついたバージョンが存在しますが、これはデータロガー機能がついた高機能版です。

ここで紹介する使い方はTunerProの方で十分です。(RTも無料ではあるのですが、ソフトを立ち上げる度にライセンス購入のメッセージが10秒間出てその間操作できません。)

読み書きするツールはお馴染みのK+D CANケーブルと(E46M3の場合は)BMWFlasherとMSSFlasherなどのソフトです。

K+D CANケーブルはE46M3以外のEシリーズ(FシリーズもOK)でも使うことができますが、読み書きソフトだけは車種ごとで用意する必要があります。

プロ向けツールだとKESSなどがメジャーなのでしょうか。

無料ソフトを探しても見つからない場合は、こちらで安価に手にいれることができます。

TunerProの基本

TunnerProの基本的な使い方と専用知識を説明します。

編集したいバイナリファイルを選択する

前回のコンテンツで説明したように、DMEデータはバイナリファイルで抽出されます。DME書き換えはこのバイナリデータを編集して行いますので、まずは編集したいバイナリファイルを選びます。

しかし、バイナリファイルを選んだだけでは何も表示されません。

前回のコンテンツで、バイナリファイルはコンピュータが解釈できる言語だと説明しましたが、TunerProが翻訳してくれる訳ではありません。

バイナリファイルを翻訳するには、翻訳データ=XDF(定義)ファイルが必要です。

バイナリファイルを説明するXDF(定義)ファイルを選択する

次にXDFファイルを選択します。

XDFファイルを選択することで、バイナリデータが翻訳され、下の画像のようにパラメータ(編集可能なデータリスト)が表示されます。

愛好家達の努力で作られたXDFファイルを探す

XDFファイルをどこで入手するのかというと、ネットで探します。

XDFファイルは、TunerProが公式に提供してくれるわけではなく、自動車愛好家たちの努力によって作られています。

TunerProの公式HPに、愛好家たちが公開してくれたXDFファイルのリンクリストがあります。

(ここにE46M3のものがあります。)

XDFファイルの充実度は車種によって差が激しい

愛好家たちによって作られただけあって、愛好家の熱量に品質が左右されています。

E46M3は他の車種に比べるとかなり充実しているようですが、完璧ではありません。

もちろん日本語対応はしてなく全て英語です。(どこを探しても日本語はありません。)

じゃあ全て英語で表記されているかというとそうでもなく、"ラベル"表記(ドイツ語と英語混じり)のままのデータが2/3を占めています。

それでも説明しきれていないデータも数多く存在しています。

そんなんじゃ使えねーじゃんと思うかもしれませんが、次の2つの方法であれば非常に有効なツールですのでその説明をしたいと思います。

TunerProの有効的な使い方

近年、ネットでもDMEチューニングデータが購入やすくなりました。データはチェックが難しい、と不安に感じることもあると思います。

そんなときにTunerProを使えば、購入したデータがちゃんと書き換えられているかどうかチェックをすることができます。

さらに、他車のデータと自分のデータを比較して、必要な部分だけコピーすることもできます。

ここではこの2つの使い方について説明したいと思います。

購入したチューニングデータをチェックする(ノーマルデータと比較する)

TunerProの非常に便利な機能の一つに、バイナリデータの比較機能があります。

これは、データの編集前と編集後のデータを、違うところだけを横並びで表示してくれます。

ネットなどでDMEチューニングデータをオーダーした時、ちゃんと書き換えがされているのか確認するときにとても役に立ちます。

例えば、"M"GarageではBuildjornalのスロットルチューンやMK20チューンなどのオーダー代行サービスを行っていますが、毎回アメリカからの納品データをTunerProを使ってチェックしています。

このチェックのおかげで、書き換え不良を何回か見つけて納品し直してもらうことができました。

なので日本のオーナーさんには確実な品質のデータを提供できています。

ただしE46M3の場合注意点があって、DMEバージョンによって対応するXDFsファイルが違います。

自分のDMEバージョンとマッチしたXDFsファイルを選択する必要があります。 バージョンの確認は前回の記事を参考にしてください。

以下が操作手順です。

CompareタブからLoad Compare Bins..を選択します。

下の画像のようなWindowが表示されたらBrowseボタンをクリックして、比較したいBinを選択します。また、比較したいデータにチェックを入れてください。(最大4個まで比較するデータをセットしておくことができます。)

天秤のアイコンをクリックします。

下の画像のようなWindowが表示されたらFind differences betweenの右にあるプルダウン2つから、比較したいBinファイルをそれぞれ選び、Searchボタンをクリックします。

下の画像のように、パラメータの違う項目のみピックアップされます。青い色の部分が定義されてない箇所で、黒い部分が定義されてる部分です。数値は16進数で表示される為、この画面では実際の数値は分かりません。

今回、説明用としてKL_EDK_VORSTテーブルのデータを比較してみます。(KL_EDK_VORSTは、電子スロットルの制御に関するデータテーブルです。)同一タグならどれでも良いので選択します。すると左のParameterTreeリストの該当部分にジャンプします。(該当テーブル名がTreeに表示されます。

テーブルをダブルクリックすると下の画像のようにテーブルデータウィンドウが立ち上がります。

天秤のアイコンをクリックすると比較データに切り替わります。

Functionプルダウンから、数値の表示方法を選択できます。Fll w/Valueを選ぶと数値そのものが表示され、Offset(+/-)を選ぶと差分が表示されます。

天秤の隣のグラフアイコンをクリックするとグラフ表示されます。(赤いラインが比較データです。)

他車データをコピーする

TunerProの目玉機能と言ってもいいのがこのコピー機能です。

自分がやりたい書き換えオプションをすでに施工している他のオーナーさんから、データをもらって自分のデータにコピーすることができます。

(E46M3の場合、DMEバージョンが共通の場合のみ可能です。)

全てのデータをまるっとコピーする場合は、先ほどのデータチェックの手順で変更点を抽出した後、リストに上がったデータを全て選択して"Copy selection from Right to Lef"ボタンを押すだけです。(全て選択するには、最初の項目を選択した後、一番下までスクロールしてシフトを押しながら最後の項目を選択します。)

コピーされたらリストから項目が消えますので、コピーされたかどうかチェックします。データチェックの説明で記載した手順でグラフを表示してみて、グラフが重なっていたらOKです。(グラフにしなくてもパラメータテーブルを見てもチェックできます。)

コピーが完了したらデータの保存を忘れずに行います。

Fileから、Save BIN as..(名前をつけて保存)を選んでデスクトップなどに保管して完了です。

もう一つ、特定のオプションのみコピーしたい場合を説明します。

データを頂いたオーナーさんが複数のオプションの書き換えを行っている場合、どれが自分のやりたいオプションか特定できない場合があります。

例えば速度リミッターを解除したい場合、なんとなく1つのデータ項目は分かったけど他に変更しなくて大丈夫か?と心配になるはずです。

この場合はとりあえず予想でやってみるか、諦めて全てのデータをコピーするかの2通りが今思いつく方法です。

どうしても全てのデータをコピーしたくない場合は、データをよく観察して自分自身で特定精度を高めるしかありません。(データの見方はまた別のコンテンツにしたいと思います。)

コピーしたい項目に目星が付いたら、データ比較機能で表示したウィンドウで、コピーしたいエリアをシフトキーを押しながら選択します。

選択が終わったらCopy selection from Right to Leftボタンをクリックし、項目がリストから消えたらコピー完了です。

(バージョンが違ったり、データも定義されてない場合など色々問題が出てきます。その場合、全コピーする為に自分と同じバージョンで施工している人を探すなど..試行錯誤が必要です。TSUNAGIアプリに記録を登録しておけば、都合の良い人が見つかるかもしれません。TSUNAGIアプリには"M"で施工した車両のパーシャルバイナリを記録に添付しています。←宣伝)

TunerProで書き換えたデータを車に書き込む時の注意点

TunerProに限らず、編集したデータを車両に書き込むときチェックサムという処理が必要です。

チェックサムとは、車に限らずソフトウェアに変更を加えたときに記述間違えなどないかチェックする処理のことです。

大抵、プログラム編集ソフトウェアにはチェックサム処理機能がついているのですが、TunerProにはついていません。

E46M3の場合MSSFlasherにはチェックサム機能がついているので編集後のファイルをそのまま書き込むことができます。

その他のE系の場合、冒頭で紹介したQuickflashにはチェックサム機能が含まれています。

チェックサム処理なしで車に書き込んでも、車は動きません。(経験済み)

TunerProで書き換えられない時の救済措置

グローバルでは、データ編集を代行してくれるWebサービスがいくつかあります。

1オプションあたり15,000円〜30,000円程度の費用で代行してくれます。

僕のような一般オーナーはもちろん、整備業者さん向けへの卸としてもサービス提供しているようです。

このサービスで提供されるデータは、グローバルのチューナーがチューニングしたデータを、自社の宣伝も兼ねて提供されたデータベースから提供されているようです。

WinOLSにも同じようなサービスがあって、WinOLSのデータベースにもこのサービスを経由してアクセスできます。

この2つの違いは今の時点では分かりません。

概ねどの車両も以下のメニューは安価に提供されています。

  • 速度リミッター解除

  • O2センサーチェックランプを点灯しないようにする

  • コールドスタートデリート(エンジン始動時の騒音を無くす)

  • ポップアンドバン(アフターファイヤーと呼ばれたりバックファイヤーと呼ばれたり、バブリングと呼ばれたり..)

  • エンジンパワーアップStage1〜3

使い方を簡単に説明すると、Webのオーダーページでトークンを買って、車両とオプションを選択し、BINファイルを添付して注文ボタンをクリックします。すると約1時間後に編集されたデータが返ってきます。

メニューにないオプションも、事前にチャットで確認をとって対応を確認することができます。(もちろん英語)

オプションあたりの消費トークンが定められてて、大体1オプション1〜2トークンです。

(1トークンが10,000〜15,000円ほど)

会員登録するだけで利用できてしまうのでとても簡単です。

施工代行を"M"ethodologyで受け付けています

TunerProでの編集やWebサービスでの購入代行、車両データの読み書きなど、"M"ethodologyで施工代行のオーダーを受付ております。

  • データの読み書きツールの探索・購入

  • データの読み書き作業代行(リモート対面両方対応可)

  • チューニングデータの購入代行

愛車をこれからも永く大切にしていきたい、DME書き換えに関しては地元近辺の整備工場では対応を断られてしまった、こんなことはできないか、などなどまずは相談から受け付けています。

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