E85Z4M 消えないエンジンチェックランプの不安解消をサポート
エンジンチェックランプが点いたままって気分が良くないですよね。しかもチェックランプ点いたままだと車検通らなくなってしまいましたし。車検まで期間があれば、しばらく点いたままだと慣れるものですが、車検が迫ると解消できない不安や焦りから、気分は悪くなってしまうものです。
今回のコンテンツは、そんなE85Z4Mのオーナーさんに、2024年の3月ごろ最初の相談をいだき、12月になって処置をお手伝いして、問題解決できたお話です。
チェックランプが点いてないって、やっぱり気持ちいいですよね。
オーナーさんもやっと気分が晴れたようで、僕も嬉しかったです。
特に、誰も解決出来なかった問題を解決できたことが、より一層気持ち良さを感じることができました。
1ヶ月後、オーナーさんから頂いたメッセージを紹介します。
あれから約1000㎞ほど走りこみました。約600㎞はそのまま走り全く問題ないことを確認できました。EVOLVEにメールで伝えたところ問題なく新たにTunig dateを書き込みしてもらえました。書き換え後にDMEの学習も兼ねドライブでしっかり踏み込んだり、下道通常走行で約400㎞走りましたが、全く持って再発していません。これまで何度も煮え湯を飲まされたので全く持って安心しきることはできないのですが、今は久しぶりにZ4Mに乗れることを楽しんでいます。今回お願いして本当に良かったと感謝しております。本当にありがとうございました。
追記;ライト類をLEDに今後は変更していきたいと考えており、そのためにも今度私もECS Expertを勉強してみようと思います。 全くの苦手分野(電気系)なので時間はかかるでしょうが、ようやく腰を据えてZ4Mと付き合っていけるようになったので、 乗れないときの良い時間つぶしにもなります。 これも今回チェックランプの対応をしていただいたおかげです。 あらためて感謝申し上げます。
これですこれ、太字の部分。
この気持ちよさを感じてくれたオーナーさんの気持ちを僕が感じ取って、僕が気持ちよくなりたくて、"M"ethodologyサービスをやってるようなものです。笑
目次
ご自身で試行錯誤しても、プロショップの力を借りても解決できなかったO2センサーエラー
オーナーさんが車両を中古で購入してから、O2センサーのエラーコードが何をしても消えないことで悩まれていました。
当時、どのようなエラーコードが出ていたかは記憶されていないようでしたが、触媒前後のO2センサーをOEM品を使ってDIYで交換したところ、一旦は全部消えたようです。
しかし半年後、触媒後のO2センサーのエラーコードが再発したので、DIYを諦め近場のプロショップに診断と対応を依頼したそうです。
この時、プロショップで純正のO2センサーに交換してもらったものの、エラーコードは消えなかったようなので、さらに調査を進めてもらうとVANOSの組み付け不良と言われたようです。
(本当にそうかどうか確認する術はありませんが、VANOSオーバーホールは別のプロショップにお願いしていたようです。)
ショップにVANOSの再組み付けとO2センサーの交換を行ってもらったものの、さらに半年後、エラーコードが再発してしまったとのこと。
保証期間内だったので、O2センサーを再度交換してもらうものの、また半年後に再発したようです。この時に出たエラーは以下の2つです。
- 2CA8 Oxygen sensor heating after catalytic converter, function
- 2C7B Oxygen sensor after catalytic converter, bank 1: Signal
この時に、プロショップからは今回センサーを替えてダメならDME交換が必要かもしれないと言われていたようです。DME交換はあまりにも高額な為、DME書き換えでO2センサーデリートを選択したようです。
DME書き換えは、Evolve-Rのオプションであるsecandary O2 senner deleteを施行するも、2C7B は消えたようですが、2CA8は消えなかったようです。
以上がオーナーさんから伺った経緯ですが、これは意気消沈ですよね.. こんな状況になってしまったら、乗り換えを考えてしまうと思います。
原因の仮説
現在起きている問題は、Bank1の触媒後(セカンダリー)O2センサーヒーターの断線で間違いないと思いました。O2センサーヒーターは、コールドスタート時にO2センサーの温度をなるべく早く上げて、未燃酸素の測定精度を本来に持っていくための機能です。
センサーは何度も替えているということなので、カプラーからDMEの間の線のどこかが切れているのでは?という仮説です。
オーナーさんには言いませんでしたが、ショップのエラーコードの解釈違いも疑っていました。
オーナーさんとショップのミスコミュニケーションの可能性もありますし。
トラブルシューティングは、必ず全てを疑い、否定する事を基本にしてます。
提案
まずはO2センサーの抵抗測定する事を提案しました。
WDSの該当部分のスクリーンショットをメールに添付し、カプラーからセンサーの間だけでなく、DMEからセンサーの抵抗を測定することで、断線箇所を特定できるかもしれない事をお伝えしました。
念のため、Torqe Proなどの汎用スキャンツールでO2センサーの動作(エンジンをかけている最中の電圧の推移)を、bank1とbank2で比較することで、O2センサーの機能に異常がないかを見て頂くことを提案しました。
オーナーさんご自身で対応されるのは少し難しいかもしれないと思いましたが、一旦挑戦してみるということでしたので、お願いしてみました。
もし、これらの確認をして異常箇所を特定できない場合は、DMEにセカンダリーO2センサーデリートを直接バイナリ編集することを提案しました。
オーナーさんは、Evolveチューンを生かしたままO2センサーデリートを希望されましたが、Evolveは、データにロックをかけていることをどこかでチラッと聞いたことがあったので、一度純正にリセットした上で書き込むかもしれないことをお伝えしました。
さらに、もしリセット後に書き換えた場合、買い換えたデータをEvolveに再チューンをお願いしたら、無料で対応してくれる可能性があることもお伝えしました。
これも直接試したり、聞いたりしないと分からないことですね。
もちろん全部やってみないと分からないことだとお伝えしました。
作業サポート
約8ヶ月後、やはりオーナーさんご自身では対応が難しかったことをご連絡いただきました。
そこで、白州までお越しいただき作業サポートをすることになりました。
1.事前準備
オーナーさんは、かなり費用を使ってると思ったので、なるべく追加費用がかからない方法を探りました。
DMEのパラメータを意味づけするXDFはMS4x wikiで無料公開されてるものを探しました。
次にパラメータの理解を進めました。MSS70ズバリは見つかりませんでしたが、MS43のパラメータが公開されていたので、これを参考にしました。
MSS70のパラメータと比較してみて、考え方とパラメータ名は流用出来そうだなっていう感触を得ました。
実は僕、電気系は苦手なので、一から勉強して測定方法や理論を学びました。
2.診断機での診断
センサーがどのように動いているか診断機(INPA)で確認しました。 確認の方法は、2つセンサーがあるので、数値の変動幅の比較です。 0から1Vの間で前後するのが正常な動きです。 2つに差異はみられませんでした。
また、evolveがどのような機能をオンしたのか分かりませんので、データログ(電圧)の動きを見て推測しようとしました。 ですが、特段変わった動きは無かったので、何も反映されていないというのが僕の判断です。
(通常(他の車も)セカンダリOセンサーをオフにするときは、機能をオフにするのではなく、エラーが出ないようにDMEのO2センサー部分の自己診断機能をオフにするだけのことが多いです。データ(バイナリ)を見て、最初は機能がオフにされていないと見ましたが、さらにデータを解析してみるとデータの変更箇所を知られないようにしているようにも見えます。なので、本当の設定は分かりません。僕の経験上、海外からデータを買うと、機能を忘れる事が良くあるので、僕はいつもデータの中身をチェックするようにしています。ですがE-volveの場合、DMEに書き込んだデータにまで暗号化する方法をとっているように見えるので、チェックはできませんでした。)
その後、エラーコードの詳細をチェックしたところ、センサーの抵抗値が1260Ωの検出が2回、65635Ωの検出が1回記録されていました。同様のログが過去に合計7回、記録されており、走行距離が50kmから100kmの間で出ていました。
やはり断線だと思いましたが、完全に切れているなら検出回数が65635になっていると思います。65635は、16進数でFFFFを10進数に変えた数字なので、カウントできる最大値という意味です。
3.配線の診断
まずリフトアップしてセンサーの状態を確認しました。
この写真...
?センサー変えてるかな???長さを調整したってこと??
形状違うし、、
オーナーさんに写真見せましたが、信頼しているショップだけに、現実の理解が追いつかないかなと思いました。
測っても意味ないかなと思いつつ、抵抗を測定した時は、2つとも3Ωから60Ωで通常値でした。 この時は線が繋がっている状態ということです。
もちろん、カプラーからセンサー間と、DMEからセンサー間を測りました。
DMEのカプラーはDMEから外してセンサー方向にピン(+)とグラウンド(-)にあてて抵抗を測りました。
グラウンドがWDSから読み取れなかったので、しらみ潰しに全部当てました。笑
やる意味ないと思ったけど念の為絶縁抵抗も測って無限大を確認。
おそらくO2センサーの付け根部分の線が切れかかっていて、走行中の段差などで線が部分的に切れて、抵抗が高くなったのだと思います。それを検知してDMEエラーカウントが積み上がったのだと思います。
もっと診断を進めるなら、2つのセンサーのカプラーを入れ替えて、もう一度走ってエラーが出るのを待ち、bank2で同じエラーが出るかどうかを確認します。
オーナーさんにもう一回来て欲しいなと思いましたけど、問題を拗らせてて、今日はランプが消えることを期待していました。
ですのでその気持ちを優先し、今回はこの機会(時間内)でチェックランプをつかないようにする処置を行いました。
4.DME書き換え
Evolveのデータを吸い出し、
- セカンダリO2センサー加熱オフ
- セカンダリO2センサー診断オフ
- 触媒加熱検出機能のDME内部テスト機能をオフ を書き込もうとしました。
ですが、セキュリティ(RSA)を通そうとした時にエラーが出て、書き込み出来なくなくなりました。 さらにエンジンも回らなくなりました。 そこで、DMEを復旧しようとしたらツールとも通信できませんでした。 さらに別のツールを急遽購入し、試したのですがダメでした。 そこでもう一つ試したのは、通信ケーブルの設定です。 E46系とE90系のケーブル設定が違うことは有名なのですが、E85はE46系であることは事前に確認していました。 もしやと思いE90系の設定にして、上記を全部やり直しましたがダメでした。
最後の手段として、EvolveのiFlashをお借りして、ノーマルデータを書き込んだら復旧できました。 PCを持ち込んで頂いて良かったです。
復旧後、購入したツールでE46のケーブル設定で読み込みと書き込みを行いました。 しかし、読み込みはできるものの書き込みでエラーが出てしまいます。 そこでE90系のケーブル設定に変えて書き込んだら上手くいきました。
5.時間があればやりたかったこと
evolveのデータが正しく書き込まれた状態で、E90系のケーブル設定でもう一度最初からやり直すアプローチです。
ケーブル設定の間違いに気づいたあと、evolveのデータをE90系のケーブル設定でセキュリティを通そうとした時は、スタックした状態のDMEに上書きを試みることしかできませんでした。
正常なDMEであれば上書きできたかもしれません。
一方でevolveのデータ保護対策でAIF(ソフトウェアのバージョン指示)がわざと削除されているので、書き込めない可能性もあります。 これはやってみないとわかりません。
最悪の場合、これまでのプロセスを2回を繰り返す必要があったので これ以上は凍えてしまうと思ったので今回はパスさせて頂きました。
作業後の気づきを共有
オーナーさんが帰宅されたあと、作業を振り返えりました。
今回、Z4MへのO2センサーデリートの書き込みは初めてでした。しかもパラメータはMS43のガイドを参考に行ったので、Z4Mで有効にできるかはやってみなければ分からない状況でした。
こんな状況の中で、気温が2℃〜8℃の中、当日の6時間だけでは、できることが限られるなと改めて実感しました。
02センサーデリートは、対処療法であり、根本解決ではありません。
もうちょっとだけお金にも時間にも余裕があれば、根本解決できる可能性が見えたので、そのことをオーナーさんにお返ししました。
オーナーさんはEvolveに再度チューニングデータの書き込みをお願いするようですので、場合によっては今回の書き込みが消えてしまい、再度チェックランプが点灯する可能性があります。
その上での次の対応をお伝えしました。
後記:どうやら、オーナーさんがEvolveに状況を説明し、僕が書き込んだデータの上にチューニングデータを無償で書き込んでくれたようです。(さすが)
1.O2センサーをご自身で注文してご自身で変えてみる。
あのあとよく考えましたが、センサーの付け根があのような銀紙を巻いたような処置は、新品部品ではあり得ないことだと考えています。少なくとももう片方と形状は同じであるべきです。 もしショップの見積もりが残っていたら、パーツナンバーや処置内容を良く見てみると良いかもしれません。 パーツをご自身で買う場合、ECSチューニングがら90ドルで購入できます。僕の方で購入代行もできます。自分でパーツを購入し、自分で替えてみる方法が一番確実に納得できるアプローチだと思いました。
2.車検の時だけデータを戻す。
evolveに再度チューニングを依頼する場合、今書き込まれているデータを吸い出してから送って下さい。そのデータを今後のオリジナルデータとして下さい。車検の時にオリジナルデータに戻し、終わったらチューニングデータに戻すという対応をご検討下さい。
今後のサポートの在り方について考えたこと
冒頭にも書いたんですけど、愛車のトラブルシューティングやチューニングはスパッと収まらない事が多いと思います。
僕の経験でもありますが、ショップに大金払って対応してもらっても、症状が再発したりすると相当ショックです。追加費用も気になるし、パートナーがいる場合、また交渉しないといけないと思うと心が重いです。
一方ショップ側としても、何が原因かやってみないと分からないし、1回車を預けてもらったくらいじゃ試行錯誤もできず、問題が解決しなかった場合ショップの信頼を失うリスクがあって、できれば受けたくないが本音。
今まで、僕はこの両方が気分良くいられるよう、"趣味"や"副業"という枠に自分を嵌めて安く対応してきました。
ですが、めちゃくちゃ時間を使っていて、他のことを犠牲にして、格安で対応していたことが、僕にとって相当気分が悪かったことに気づいたんです。(遅い)
そこで四者(オーナーさん、オーナーさんのパートナー、ショップ、僕)が気持ちよくいられるよう、間を取ったのが、愛車のサスティナブルサポートサブスクリプションです。1年間と長めに時間をとり、根本的な問題の探索とアプローチをサポートします。
パートナーがいる場合、車に対する予測できない出費の不安感も下げることができます。
1年で問題解決できなくても、オーナーさんで問題に対処できるようスキルを身につける名目なら、パートナーさんの納得感を得られるかもしれません。
8年試行錯誤して一つ区切りのついた形かなと思いました。
やっぱり白州の景色に感動
作業中、オーナーさんは周辺を散歩されたようです。
自宅からべるが(甲斐駒ヶ岳方面)に向かう"べるが通り"を通られたようです。
この事を帰宅されてから奥様に話したら、行ってみたいとおっしゃったそうです。
そうなんです。べるが通りの甲斐駒ヶ岳は絶景なんです。
僕もその景色を見てこの地への移住の決め手になりました。
景色で感動ってあるんだ、って初めて感じました。
チェックラップ消えてスッキリ。景色でも感動を味わえてもらえてよかったです。