E46M3 DIYでCSLスタイル カーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと3

ChatGPTで生成したE46M3を正面から見た画像

2024/7/9 更新

Turner製 CSLスタイル カーボンエアボックスに交換したときの2000〜3000rpmの乗りにくさが、ベースマップのチューニングによってやっと解消できたので、そのアプローチをシェアしたいと思います。

データロガーで容積効率とエンジン回転数、ナローバンドO2センサーのラムダの値を15分ほど取ります。そのデータを燃料噴射のベースマップと同じ軸でラムダの平均値をとり、ベースマップの現在の値に掛けとうまく調整されます。

するとアクセル踏み始めの燃料が濃かった状況が改善され、十分なトルク感が得られるようになりました。これによってカーボニアスのシュノーケルノズルもその他の追加ダクトも不要になりました。

NA M3 Forumsで、素晴らしい方達が示して下さった方法を試して上手くいきました。

ここまでかなり長い道のりでした..走って悩んで、調べて走って悩んで、調整して走って調べて悩んで.. NA M3 Forumsで道を示して下さった方たちには感謝しかありません。

今回のコンテンツは、この方法について実際にやってみたことを共有することで、ご自身で作業ができるイメージをより具体的にすることを目的にまとめています。


目次

ずっと悩みだった中間領域のドライバビリティ

2000〜3000rpmの中間領域の乗りにくさをもう少し具体的に表現すると

  • トルク感の不足
  • アクセル踏み込んでも詰まったように回転が上がらない
  • シフトアップした時のジャーキング(ガクガクする)

でした。

これらの症状から、シュノーケルノズルが無いことで以下ような補正制御のバランスが崩れたんだろうなと予想していました。

  • アンチジャーキング制御
  • エンジン慣性重量定数
  • シフトアップ制御

これらのマップを眺めたり、いじったり、走ってまたいじって、エンジンの反応を感じてエンジニアならどう制御するかなど、想像を膨らませながら調整してを繰り返しても改善できずにいました。


実走ログをもとに燃料噴射ベースマップを調整

DMEチューニングといえば、オープンループマップをシャシーダイナモに載せて調整するというのがよく目にする方法です。

今回のチューニング方法は、実走ログをもとにクローズドループマップ(ベースマップ)を調整する方法です。

CSLのベースマップはVE(Volumetric Efficiency=容積効率)マップです。

エンジン排気量などから計算された理論最大吸気量に対して、温度、圧力、スロットル開度などから計算された吸気量の比率とエンジン回転数のテーブルで燃料噴射量を決定しています。

クローズドループは、ナローバンドO2センサーの値(ラムダ1=理論空燃比14.7)を目標に燃料調整されるため、ベースマップの調整は基本的には不要だというのがこれまでの定説だったようです。


※ナローバンドO2センサー:理論空燃比に対して濃いか薄いかの出力をDMEに送るセンサー。コスト的にも安く純正採用されることが多い。
※ワイドバンドO2センサー:現在の空燃比を正確にDMEに送るセンサー。主にアフターマーケット向けだったが、最近では純正採用されている。


    しかし、例えばアクセルを抜いて蛇行している状態(O2センサーのフィードバックがない状態)から、初めてアクセルを踏み始めたタイミングは何を基準に燃料噴射するんだ?と疑問がありました。

    この始めの一発目の燃料噴射量を決めるのが、ベースマップの役割だったようです。

    この燃料が多すぎると失火して、ガスガスとエンジンの回転が上がっていかないという状況だったようです。(身をもって体験しました。)


    現車セッティングといえば、ワイドバンドO2センサーをつけて空燃比をモニタリングしながらオープンループマップを調整する方法が一般的ですが、今回のチューニング方法はナローバンドO2センサーのみで十分対応できるセッティン方法でした。


    トルク感は雲泥の差

    標準M3の低回転トルクが戻ってきた感じで不満がなくなりました。街乗りも十分です。

    軽自動車に負けることはありませんし、上り坂を登ってもギアを4速ホールドでも普通車を追い越せるくらいトルク感が回復しました。

    なのに回せば快音を響かせてくれて、超気持ちいいのは変わりありません。

    CSL含むカーボンサージタンク仕様で、フラップを除去した場合の持病であるゼロスタート時の息継ぎも概ね解消されます。


    チューニングのポイント

    使うツールや手順は、NA M3 Formsにこれ以上ないってくらい丁寧に書かれていますので割愛します。

    ここでは、実際に自分でチューニングしてみて感じた、チューニングのポイントを残しておきたいと思います。


    方法論を理解する

    このチューニングで最も重要な理解は、走行ログをCSL用のベースマップと同じ解像度で取得し、フィルタリングしてテーブル形式に整理することです。

    EFanalyticsで表示したO2センサーのヒストグラム

    TunerProで表示したVEマップ

    CSL用ベースマップと同じ解像度というのは、縦軸が容積効率(%)、横軸がエンジン回転数(rpm)、交点がO2センサー(ラムダ)の平均値でデータを集計するということです。

    CSL用ベースマップの容積効率とエンジン回転数の交点は燃料噴射係数ですので、この係数に走行ログで平均を取ったラムダ=調整係数を掛けるだけで調整が取れてしまうのです。

    なぜ濃いか薄いかの出力しかしないナローバンドO2センサーで良いかというと、燃料が濃かった回数と薄かった回数の平均を取ることで、どっち寄りかの係数を求める事ができるからです。

    実際のO2センサーの挙動を見ていると、燃調が取れていれば上振れ下振れの波形がバランス良くていい感じに一定です。平均すると1になるはずですので、この状態だと燃料調整が取れているということになります。

    O2センサーの値の時系列グラフ

    一方で、O2センサーの挙動が上振れすることが多ければ、燃料が濃い傾向たにあり、下振れすることが多ければ燃料が薄いことになります。

    走行ログの量が少なすぎると、極端に調整量が増えて危険ではないか?と心配になってしまうかもしれません。

    しかし、実際のラムダは1.2から0.8なので平均を取った係数を掛けても、ベースマップの燃料噴射量を極端に濃くしてしまったり、薄くしてしまったりということはありません。

    ですが、データ量が多いほど係数の精度が高まることには変わりないので、なるべく長く走行ログを取ります。

    ガイドでは走行ログは15分以上が推奨されていますが、15分とは言わずデータ取得量が多ければ多いほど良いと思います。僕が実際やってみた感覚では1セッション30分くらいが良いかなと思います。

    ちなみに、セッティング用の走行ログで最低限必要な4点(容積効率、エンジン回転数、ラムダ1、ラムダ2)を取ると、データ取得間隔は0.3秒から0.6秒になります。これに性能評価の為に速度とスロットルポジションを追加すると0.8秒前後になってしまい、かなり荒いというかデータを取れるチャンスが失われてしまいます。


    走行ログ計画を立てる

    実際に走行ログを取ってみると、自分が良く使う中間領域のデータが取れます。悪い言い方をすると走る道や自分の運転の仕方によってデータが偏ります。

    街乗り、高速、峠道などで取れるデータ領域が偏ります。

    欲しいのは、アクセルを踏み込んだ瞬間のラムダですので、まずはデータをとってみた後データをよく観察し、走る道や走り方の戦略を立てると良いと思います。

    NA M3Formsでは、5回くらいやればいいんじゃない?的な感覚で説明されていますが、実際にやってみてその通りだと感じます。


    CSLベースマップとAlpha-Nマップは別物

    Alpha-Nという言葉の意味が理解されず、このチューンが必要だという認識だけが一人歩きしてますので、意味をはっきりさせておきたいと思います。

    CSL用のベースマップは縦軸が容積効率(%)に対して、Alpha-Nの縦軸はスロットル開度(%)です。横軸はエンジン回転数で共通です。

    容積効率は、エンジン排気量などから計算された理論最大空気密度に対して、MAP(マニホールド空気圧)センサーやIAT(吸気温度)センサー、スロットル開度などの値からDMEによって計算された実質空気密度の割合です。

    気圧と温度が空気の密度にどれほど影響を及ぼすかは、高校化学を思い出していただければ想像できるはずです。

    わかりやすいように、容積効率(赤い線)とスロットル開度(白い線)を同時に走行ログをとって時系列で比較してみました。

    データログにおけるVEとスロットル開度の時系列データの比較

    Alpha-NマップとVEマップを見比べると縦軸は両方とも0-100%表記で、パーセンテージのレンジも変わりない上に燃料の噴射係数も大きく違いがありません。

    このグラフから以下のことが考えられます。

    • 低回転領域はVEマップの燃料が濃すぎる
    • 高回転領域はAlpha-Nマップの燃料が薄すすぎる
    やっぱり最適なドライバビリティを得るには、調整しないといけないことがはっきりしました。

    なお、容積効率は各センサーの値をもとにDMEがリアルタイムで計算していますので、各センサーのスケーリング(入力電圧に対する温度や圧力のマッピング)が間違うと、燃料噴射量も間違ってしまいます。なのでセンサー選びは慎重に。また、センサー電圧に対する実際の温度や圧力をDMEにセットアップするのを忘れずに。



    チューニングのスタート地点

    どこをどう弄れば車がどう変わるか、納得できるレベルでコントロールできるようになったところでやっとスタート地点に立てたのだと思います。

    チューニングの世界は落とし所はあっても終わりはないというのは誰もが想像できることだと思います。

    僕もこの先M3の楽しみ方が変わってくると思いますので、その時心地よい状態にチューニングしていきたいなと考えています。


    参考投稿


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    パーツの選定から注文、施工、データ書き込み、セッティングのトータルサポートをお受けします。

    • パーツ購入サポート
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    • ウォームアップマップのリセッティング
    • スロットルレスポンスのリセッティング
    • アイドルセッティング
    • オイルレベルコーディング
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