E系BMW R系MINI DMEアップデートツールWinKFPの価値
今回はE系DME(デジタルモーターエレクトロニクス=エンジン制御)やEGS(エレクトロニックギアシフト=シフト制御)の純正アップデートやリプログラミングが行えるWinKFPでできる事を日本語で書き留めておきたいと思います。
先日E90 M3のオーナーさんよりフルセットでご依頼頂いたので、良い機会だと思ってコンテンツにしてみました。
実施したメニュー
- DMEバージョンのアップデート:231E→241E
- EGSバージョンのアップデート:GTSグレードへ
- DMEオプションの選択:コールドスタートデリート、バブリング
WinKFPの価値
WinKFPはE系BMW、R系MINIのDMEとEGSのアップデート、リプログラミングができるツールです。
もちろん、中古のDMEやEGSのソフトウェアやVINの書き換えも行えます。
INPA(診断)やNCS Expert(コーディング)とセットでシェアされています。
ライトモジュールやGMモジュールなどをアップデート(厳密に言えばコーディングし直しによるリセット)できるのがNCS Expartですね。
WinKFPによるDMEやEGSのアップデートは、アップデートしたいデータのバージョン番号を"見てもさっぱりわからない、解説もどこにもないリスト"から選ぶことでアップデートできます。
"見てもさっぱりわからない、解説もどこにもないリスト"というのは、DMEやEGS(以後ECUと呼びます)の型式に対する、ZB Number(No.)=アッセンブリーナンバー=ZUSBという2段構成になっています。(言い方も3種類あるのが余計にややこしいです。)
こんなの誰にも使えないじゃないかと思うのですが、WinKFPもそこまで不親切ではなく、”最新にアップデートする”だけであれば、ECUの型式のみ選べばVIN情報をもとにZB No.を指定することなく、自動で最新版にアップデートしてくれます。
(ここまでは、正規ディーラーツールであるISTA-Pででも同じことができます。)
しかし、WinKFPでしかできないことがあります。別グレードのデータを強制的に書き込むことです。
だから、E46M3のSMG2プログラムをCSLにできますし、E9x M3のDCTプログラムをGTSにできますし、R5x MINIのDMEをJCWにもできるのです。
- E46 3 SMG2 CSL:7843255
- E9x M3 DCT GTS:7845773
- R5x MINI DME JCW EU ver:実験して上手くいったら公開します
上記ZB No.は有名で海外コミュニティでシェアされているので、こうして理解することができます。しかし他のZB No.も確認不可能なのかといえばそうではなく、INPAでECUのinfomationを見れば現在のZB No.を確認することができます。
なので、自分の書き込みたいバージョンの車に乗ってそうなオーナーさんを見つけて、INPAでZB No.を覗かせてもらえれば、WinKFPを使って自分の車もそのデータにバージョンアップできるのです。
ただし、ZB No.に含まれる意味が大きく3つあって、出力や排ガスに影響が出るのでアップデートに挑戦する前に理解が必要です。
- 車両の"グレード"
- "リージョン(地域=国)"
- アップデート(日付)
この3つの意味が1つのZB No.に含まれています。
グレードによる違い:DMEのハードウェアは同じなのだけど、インジェクターの容量やカムプロファイル、ポート加工有無などの違いに合わせた制御データの違いがあります。
リージョンによる違い:各国のガソリンのオクタン価の違いによるノッキング検出制御の違いと、排ガス規制による排ガス規制制御の違いがあります。
アップデート(日付)による違い:年々厳しくなる排ガス規制強化の対応や、不具合対応、ドライバビリティの改善など理由は多岐にわたります。
ECUの中身を全部チェックするのは面倒なのでやってませんが、それぞれのバージョンの中身をうっすらと眺めていると、共通していたのはベースマップはみんな同じでした。違うのは補正系の制御マップです。
間違えて環境規制の厳しい国のバージョンに書き換えてしまうと、最新版にアップデートしたのにパワーダウンしてしまったということが実際に起こりうるというのが理解できました。
良い面を見れば、ダウングレードやリージョン変更によるパワーアップの可能性が狙えるので、ここにWinKFPの価値が生まれるわけですね。
(ちなみにどの年代のどのZB No.が最もパワーがあるかは僕も分かりません。)
DMEオプション選択の価値
僕を含めDIY好きであれば、少しでも安くお手軽に楽しさを得られないかと常にアンテナを張っているものですよね。
WinKFPなどのツールを使って、抜け穴を見つけるような感覚でZB No.を探し当てるというハードワークをして他国のデータに書き換えるというのもオプションの一つでした。
ピークパワーはいらないけど、街乗りやちょっと峠を流す時のトルク感や安定的な出力が欲しいという方は多いと思います。また、純正を大きく外さないというのも一つのポイントだと思います。
そんな時は ・排ガス規制制御をオフにする ・セカンダリーO2センサー補正をオフにする
というDMEオプションを選択するだけでもアクセル操作全域に渡って出力アップや排ガス温度や燃焼状態に左右されない安定的な出力を"体感"できると思います。
今までは、こういったオプションの選択だけでもプロチューナーに頼む必要があって、数十万の費用がかかっていました。
でも最近ではDMEチューンの民主化が進み、2〜6万円のリーズナブルな費用(かつDIYで)で出来るようになりました。
他にも
- バブリングをオンにする
- 速度リミッターを解除する
- コールドスタートを削除する
なども同時にやれば追加費用を抑えてできます。